カルメン・マキ『ペルソナ』 [CD-CM-002]

カルメン・マキ『ペルソナ』 [CD-CM-002]

販売価格: 3,080円(税込)

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商品詳細

☆ カルメン・マキ40周年記念アルバム ☆    2009年7月4日 リリース。
<ペルソナ=仮面>

瞬きひとつで10年が過ぎ、瞬き四つが川のように流れて道ができた。
1969年、17歳の少女が「時には母のない子のように」で鮮烈デヴューした。
40周年の今、原点に立ち返り新たに旅立つ。

「ペルソナ=仮面」を剥ぐ!!
1951年、日本人の母とポーランド系のアメリカ人を父に鎌倉で生まれたカルメン・マキは、17歳の時寺山修司の主宰する劇団「天井桟敷」の『書を捨てよ、町に出よう』(新宿厚生年金会館)で初舞台を踏んだが、演技よりも歌をという師の導きによって歌手としてデビューした。
 そんな運命的な育ての親である、異能の歌人にして詩人でもあった故寺山修司に「戦争は知らない」という幾多の歌手に歌い継がれた佳曲がある。原曲を歌って以来、何故か封印して来たカルメン・マキは、2009年の今、「40周年記念アルバムには是非入れたい」と言った。
 年輪と共により深みある圧倒的な歌唱力を身につけたカルメン・マキの、聞く人の心に染み渡る世界を御楽しみ下さい。 さあ、詩劇の始まりです。(プロデューサー 大木雄高)

【Musicians】
 太田惠資(ヴァイオリン、エレクトリック・ヴァイオリン、ヴォイス)
 黒田京子(ピアノ)

 ゲスト: 吉見征樹(タブラ)
      佐藤芳明(アコーディオン)

【収録曲】
 1. にぎわい   作詞:浅川マキ / 作曲:かまやつひろし
 2. 北の海   詞:中原中也
    〜 人魚   作詞:カルメン・マキ / 作曲:春日博文
 3. 真夜中の花   詞:カルメン・マキ
    〜 ふしあわせという名の猫   作詞:寺山修司 /作曲:山本幸三郎
 4. LOVESONGを唄う前に   作詞:加治木剛 / 作曲:春日博文
 5. 戦争は知らない   作詞:寺山修司 / 作曲:加藤ヒロシ
 6. 海の詩学   詩:寺山修司
 7. 街角   作詞:加治木剛 / 作曲:春日博文
 8. ペルソナ   作詞:高橋睦郎 / 作曲:和田誠
 9. 友だち   詩:寺山修司
    〜 てっぺん   作詞:カルメン・マキ / 作曲:鬼怒無月
10. ジェルソミーナ   日本語詩:不明 / 作曲:ニーノ・ロータ


【カルメン・マキ 〜 本人による収録曲について】
1 :にぎわい

 なぜか、「海」や「港町」を題材にして、それも男言葉で歌う曲が多い私のレパートリーのひとつ。ライブでは1部か2部の頭で歌うことが常である。古ぼけてちょっと猥雑感のある酒場で、グラス片手にほろ酔い加減で聴いてもらうのが似合う曲だと思う。浅川マキさんとかまやつひろしさんの合作というのも意外だ。

2 :北の海

 「北の海」は‘08にリリースした全編朗読によるアルバム『白い月』にも収録されている中原中也の詩。太田さんのヴァイオリンと黒田さんのピアノが、いかにも重く暗い北の海を連想させ、2曲目にしてどこか不穏に包まれた世界へと一変する。つづく「人魚」への前触れとしてぴったりの詩・演奏だと思う。

――人魚

「人魚」は私のレパートリーの中では最も重要な位置を示す曲のひとつだ。初盤は96年リリースの、春日博文とほとんど2人だけで創ったアルバム『UNISON』。それ以降、ライブではミュージシャンが変わる度にアレンジも変わり、私はもう10年以上もこの曲を歌いつづけている。
 当初は5分足らずの小品であったが、3部構成でドラマ性の強いこの曲が、今作では吉見征樹さんのタブラソロや後半の黒田京子さんの鬼気迫るピアノソロをフィーチャーすることによって正にドラマチックな大作へと甦った。詩、曲共に、他に類を見ない傑作だと自認している。

3 :真夜中の花

 この2曲のみ黒田さんとのDUO。ピアニッシモのピアノから始まる「真夜中の花」は、自作詩「A bird & A flower」の中の1部分。孤独を抱え込んだ女性の眠れない夜をイメージした、とでもいいましょうか。

――ふしあわせという名の猫

 つづく「ふしあわせという名の猫」へ、やや明るめに展開してゆく黒田さんのアプローチが自然で、また全編を通しての女性ならではの繊細さが素晴らしい。ひとり暮らしの、淋しい女の、白い部屋の、窓際にはいつも黒い猫が一匹・・・そんな光景を思い浮かべて聴いてくださればと・・・。

4 :LOVESONGを唄う前に

 OZの3rd Albumから。当時、生活の半分を一緒に過ごしたと言っても過言ではないOZの欠かせないメンバーの1人であった作詞家の加治木剛と、他の作品同様何度も話し合って生まれた詩。だから自作詩でないことが驚きともいえる内容である。
 今回も、この曲のキー・ワードとも言うべき「セルロイドの夢」を彷彿させるアレンジを主体に考えた。それに応えるかのように、切なくて哀しくて、懐かしくもあり、そしてどこか病的な匂いさえ漂うこの詩にふさわしい太田さんのちょっとエキセントリックなエレクトリックヴァイオリンは恐いぐらいだ。

5 :戦争は知らない

「時には母のない子のように」と双璧を成すとも言うべき私の代表曲。多くのアーティストに歌い継がれている寺山修司作詞、加藤ひろし作曲の名曲である。レコーディング化はこれで3回目だが、今作では私のア・カペラから始まり、つづいて黒田さんの、子供時代のはかなくも甘い郷愁を漂わせるピアノが入り、間奏部では私がアラブでもインドでもトルコでもない私のルーツであるユダヤで、と我儘なお願いをしてしまった太田さんのヴォイスが聴ける。それはこの曲の核心を突くといってもよい重要な役割を果たして、結果、感動的な仕上がりとなった。

6 :海の詩学

 いつか形にして残しておきたいと思っていて叶った寺山修司の長編詩。いつも人からお金で買われていた娼婦が、年老いて今度は自ら海を買いに行くという話である。吉見さんのタブラも加わって、3人が言葉のひとつひとつを大事に捉え反応してくれている。最後の太田さんの悲壮感漂うヴァイオリンが好きだ。

7 :街角

 これもOZの3rd Albumに収録されている1曲。目立たない小品だが私は好んで時々ライブで歌っていた。今作ではアコーディオンの佐藤芳明さんに加わっていただき、この曲の持つイメージがぐっと広がった。

8 :ペルソナ

 この曲の歴史も古い。1969年、デビュー間もない時期に寺山修司が監修した企画アルバム『アダムとイブ』に収録されている1曲。作詞は現代詩の高橋睦朗、作曲はイラストレーターの和田誠。曲としての区切りがなく、しかもテーマとなるメロディやリズム、繰り返しの部分等も一切なく、イントロからエンディングまでがひとかたまりでしか成り立たないので、やり直す時は常に最初からやらなければならない。
 難しい曲で若い頃は意味もよくわからず歌っていたが、ある時期をきっかけに好んでライブでも歌うようになった。ちょっと大袈裟なくらいのイントロとエンディングのメロディ。一歩間違えると変な方向にいかないともかぎらないが、太田さんと黒田さんは堂々と確信に満ちた演奏をしている。これも又、他に類を見ない傑作曲だと思う。

9 :友だち

「友だち」は私の大好きな寺山修司の詩。完全即興で、ゲストの吉見さんと佐藤さんも入って、みんなそれぞれ面白い試みをしている。そして自由でくだけた雰囲気がそのまま「てっぺん」へと繋がってゆく。

――てっぺん

 「てっぺん」は今作唯一のオリジナル未収録曲で、ずいぶん前に鬼怒無月さんが曲の素材・モチーフとしてギター1本で弾いていたものに私が詩を付けた。今回はピアノ、ヴァイオリンに加えゲストの吉見さんのタブラ、佐藤さんのアコーディオンという編成で今作唯一の明るく賑やかな仕上がりとなった。
 新解釈ともいうべき吉見さんのヴォイスパーカッションが曲にメリハリをつけ面白い展開になっていると思う。佐藤さんのアコーディオンも切れが良く見事だ。「てっぺん」を目指しておののきながらも踊るようにして、5人が渾然一体となっている感じが伝われば嬉しい。

10 :ジェルソミーナ

 今は亡き巨匠フェデリコ・フェリーニ監督の傑作『道』(ラ・ストラダ)の主題歌で世に知ら示めされたニーノ・ロータの名曲。93年リリースの『MOONSONGS』以来の再録である。その『MOONSONGS』ではベースとピアノという編成でアレンジもジャズっぽかったが、今回は原曲に近くシンプルに仕上げた。佐藤さんのアコーディオンソロのイントロからそのまま1バージョンはアコーディオンのみで歌う。アコーディオンの音色はこの曲にやはりとても合っている。太田さんのヴァイオリンも秀逸。
 最後にこの曲をもってきたのも暗示的ではあるのだが、まぁ、それは聴いている人の想像力におまかせするとしたい。

(文中敬称略)